what's orure?
「九州オルレ」とは、
韓国・済州島発祥の「済州オルレ」の姉妹版として始まったトレッキングコース。
オルレの魅力は海岸線や山などの自然、民家の路地などを身近に感じ、
自分なりにゆっくり楽しみながら歩くところにあるのだとか。
21コースが認定され、踏破認定のスタンプラリーも実施中。
九州の自然や文化、温泉などを五感で楽しみ、土地の魅力にふれる体験は、
知的好奇心と体を動かす清々しさの両方を味わえることでしょう。
マイペースで歩きながら、思い思いの時間を体感してみませんか。
オルレの歩き方
青と赤を結んだリボンがコースの目印。
石にペイントされた矢印。
木製の矢印。青は正方向、赤は逆方向
カンセ。馬の頭が進行方向
オルレのマナー
オルレだけではめぐりきれない絶景ポイント
ジオパークウォークで自然を体感する。
一億年もの生命の神秘を巡る
大小120もの島々が点在する風光明媚な天草諸島には、生命のはじまりを思わせるたくさんの「不思議」が満ちている。
その秘密は、一億年もの太鼓の躍動が刻みこまれた天草独特の複雑な地形に隠れているといえるだろう。
年月の証ともいえる岩礁には、白亜紀の化石のあとが刻まれ、海、山、森は、イルカや魚、昆虫や動植物など多種多様な生態系の住処となり、
子どもの頃にかえったような純粋な喜びをもたらしてくれる。
苓北町の突端、南西側一帯に続く富岡海域公園は、天高くそびえる黒々とした断崖絶壁と白い岩石が突き出た岩礁のコントラストが見事なエリア。
1970年に日本初の国指定海域公園に認定されたこの地は、よく見ればモアイ像や動物の顔を連想させるユーモラスな奇岩、怪岩のオンパレードで笑いを誘う。
さらに複雑な岩礁は、地層の観察、磯の生態系観察にも適している。自然そのものが育んだ複雑な地形は、まさに「海に浮かぶ博物館」そのものといえるだろう。
また江戸時代の発明家である平賀源内が「天下無双の良品」と褒めたたえた陶磁器の材料である天草陶石が一面に広がる美しい岩場の風景は、
天草ならではの撮影スポットとしても大変人気が高い。
地球の太古と今を結ぶ場所
ジオパークとは、ジオ(地球)に親しみ、ジオそのものを五感で見つめ、学ぶジオツーリズムを楽しむ場所を指している。
天草の歴史や文化、産業、生態系は、互いに密接な関わりを持ちながら、天草で暮らす人々によってその希少な多様性が大切に保全され、受け継がれてきたと言えるだろう。
複雑な地形が数多く残る天草ジオパークを探訪することは、生態系と私たちの暮らしの関係性を考える良い機会になるに違いない。そこから見えてくるのは、地球全体なのだから。
世界に誇る天草陶石のものづくりを訪ねる
天草の焼きもののルーツがある
「内田皿山焼」のギャラリーを訪ねると、畑の畦道をトコトコ走る愛らしいウリ坊たちの姿を見かけて嬉しくなった。
動物も人間もこの苓北の自然に抱かれ、同じ時を生きているのだ。そう、陶石などの鉱物も。
明治30年創業の陶石採掘所としてスタートしたこちらは、昭和45年にタコ壺を作っていた窯を引き継いだ後、良質な陶土を用いた開窯を決意。
敷地を採掘したところ、江戸時代の古陶片がゴロゴロ出てきたという。調査の結果、この地は100年間にわたり、陶器が焼かれていた「幻の窯」ということが判明したのだった。
2代目の木山健太郎さんによると、「天草陶石のものづくりを始めるにあたり、まずは古陶片に多く見られた天然柞灰の釉薬を使った焼きものを復活しようと考えた、それが当窯のルーツ」らしい。
地元の学校や八幡宮などで剪定したマンサク科柞の木を分けてもらい、燃やして手作りする釉薬は、青みがかった優しい風合いが魅力だ。
採掘した天草陶石は、余すところなく使うのが信条。ガラス質を多く含む白い部分は磁器に、その周りの鉄やチタンを多く含む赤土は陶器に。
なおタコの捕獲用と産卵用とに作るタコ壷は、赤土に地元の志岐粘土をブレンドして使う。近年見られるプラスティック製に比べると、やがて海の砂に戻る陶製は、エコ。
「時代的にも自然に即したものづくりが見直されているのでしょう。それができるのも天草の豊かな海の実りあってのこと。ありがたいです」と古陶片を手に、木山さんが微笑んだ。
煉瓦造りの煙突が並ぶ工房は、声をかければ自由に見学できる。素焼きの焼酎カップにイルカの絵を描いているのは、子育て世代の地元のスタッフ。
「全員で意見を出しあって形にしたり、お客様が求めるオンリーワンの器をあつらえたり。歴史をふまえつつも、使い手の声が生きたものづくりを繋いでいきたいです」と木山さん。
実際、苓北町の学校給食の器はすべて内田皿山焼というから、産地の心意気を感じる。生徒は卒業前に器を焼き上げ、一度は自分で使った後、後輩へと引き継いでいく。
「子供たちへの普及活動にも力を入れて、平成15年に日本の伝統工芸品の認定を受けた天草陶磁器の産地化をすすめつつ、世界に向けて天草ブランドを発信していきたいです」。
懐かしい旧校舎で器に親しむ
天竺の麓。平成15年に閉校した木場小学校を活用した「NPO法人天草木場の杜自然学校」の「天竺窯」を訪れると、
陶芸家の住田啓一郎さんと愛猫が迎えてくれる。かつて「木山陶石」の採掘部門にいた住田さんだが、ひょんなことから作陶部門へ異動に。
「初めは興味なかったんですが、やり始めると抜けられなくなりまして。修業先とも協力しながらやっとります」。
作陶はガス窯で一ヶ月に約2窯のペース。濁りのない真っ白の肌に仕上がる白磁シリーズの他に、レモンイエローのビアカップなどお客様の要望から生まれた器も多数。
「ありがたいですね。なかでも私が最も力を入れているのは、修業先で学んだ銅を原料にした辰砂釉です」。
赤一色に焼くのは難しいそうだが、緑とのグラデーションも美しいと感じた。学校の教室という場所柄、親子連れで遊びに来る人も多い。天竺に抱かれた穏やかな1日が過ごせるだろう。
天草陶石の伝統を継承する窯元、内田皿山焼(有限会社木山陶石鉱業所)
江戸期の才人である平賀源内が「天下無双の上品」と絶賛した天草陶石の採掘から作陶までを一貫して行う希少な窯。
天草内外で展示会を行い、普及に邁進する。ギャラリーや工房見学、絵付け、手びねり体験などもできる。
熊本県天草郡苓北町内田554-1 0969-35-0222
懐かしい旧校舎で器に親しむ天竺窯
天草下島最高峰の「天竺」の麓の窯。小学校跡地を活用した敷地には、加工生産所や宿泊施設もある。
使い手の声を反映させた器は、ご近所の「旬彩工房やまびこ」の食卓でも使われている。のどかな教室で行われる陶芸教室も人気がある。
熊本県天草郡苓北町都呂々6118-2 0969-36-0860
天草・苓北の周辺で楽しめるオルレコース1
熊本県 天草・維和島コース
距離…12.3km、所要時間…4〜5時間、難易度…中〜上級
維和島の大自然と歴史を満喫
不知火海にうかぶ和島は、別名千束蔵々島とも呼ばれ、風光明媚な天草諸島のひとつに数えられる。
スタート地点の千崎を出発し、千崎古墳群へ。小高い丘に登れば古墳時代の約20基もの石棺古墳が点在し、諸島をつなぐ橋のある風景が目を楽しませてくれる。
塩田跡が広がる海岸線を歩いて、天草四郎生誕の地といわれる蔵々漁港に到着。四郎の産湯に使われたと伝えられる井戸も残されている。
漁村からみかん畑の小道をすすむと、展望台のある維和桜・花公園が見えてくる。四季折々の花が咲くこの場所は、海を渡り旅する蝶、アサギマダラも訪れるとか。
そこからゆっくりと登り、維和島一の標高をほこる高山(166.9m)へ。
「日の出・朝日が微笑む」といわれるほど美しいパノラマの景色で知られる頂きからは、天気がよい日は、阿蘇山、雲仙普賢岳、天草諸島、八代海、有明海をのぞむ爽快な景色を一望できるだろう。
山を堪能したあとは、再び海へ。6500万年前の地層がむきだしになった外浦自然海岸を前に、自然の造形美の不思議さに目をみはる。
最後は、千束天満宮でお参り。維和島の魅力を満喫できるコースである。
天草・苓北の周辺で楽しめるオルレコース2
熊本県 天草・松島コース
距離…11.1km 所要時間…4〜5時間 難易度…中級
天草五橋が彩る日本三大松島の絶景
日本三大松島のひとつ、天草松島の絶景を満喫できるコース。
地域住民によだれ地蔵という愛称で親しまれる知十観音様に見送られ、歩き始めると、遠浅の干潟が続く知十海岸にさしかかる。海岸線の岩場には、
巨木を積み上げた「だご石」や御手水の滝などがあり、見飽きることがない。なお、この地は昭和初期まで石材の採石場として栄えたという。
知十海岸にも、わずかだがその名残を留めている。海につながる川を越えると、早期米が穫れる田園風景が広がり、コース沿いの川には、鯉やフナが泳ぐ。
山道の入口から、山道をゆっくりと登れば、巨大な岩が美しい千元森嶽に辿り着く。コース内で最も標高が高い233mの千元森嶽からの大パノラマビューは、疲れも吹き飛ぶほど圧巻。
上天草の山々や青い海に点在する島々、天草五橋、遠方には雲仙の峰まで望むことができ、しばし見とれてしまう。
360度の絶景を楽しんだら、昭和10年に国指定文化財に認定された千巌山へ。ここは、島原・天草一揆の折、山頂で天草四郎が祝宴を開いたと伝えられる地。
奇岩が織りなす苔むした断崖には、老松やミツバツツジなども群生し、荘厳な気が満ちている。
山頂からは、日本三大松島のひとつである天草松島の名島海が一望でき、国の名勝に選定された魅力を実感できるだろう。
点在する巨石群を通過し、深い森を歩き、小さな漁村を通過したら、龍伝説をモチーフにしたゴールの足湯に到着。天草五橋の5号橋を眺めながら、旅の余韻に浸ろう。
天草・苓北の周辺で楽しめるオルレコース3
長崎県 南島原コース
距離…10.5km 所要時間…3〜4時間 難易度…中級
南蛮貿易で栄えた港町を歩く
大航海時代、南蛮貿易とキリシタン布教の拠点として栄えた口之津港から瀬詰崎を巡り、再び口之津を目指すコース。
スタートから約1.4km地点の都波木神社付近では、北に標高180mの富士山を望むことができる。
さらに人工のため池、野田堤からは、平安時代、太宰府に伝達していたというのろし釜が整備された標高約90mの烽火山の頂が見える。
春夏はジャガイモ畑、秋冬はレタス畑という風景にも心が和む。
続いて山林の中を進むと、詩人の野口雨情が自身の詩に詠んだ幻の野向の一本松と呼ばれる高台に出るが、今は松ではなく桜のメッカ。天草の島々を望む景勝地である。
田尻海岸公園から平坦な道を歩くと、船の安全航行を見守る瀬詰崎灯台に着く。対岸の天草を遠望できるポイントでもあるこちら。
島原半島ジオパークでも紹介された玄武岩が多い海岸で、樹齢300年を超す迫力満点のあこう群落も見応え十分だ。
終盤の8.7km地点。玄武岩の海岸入口では、干潮時は海岸線、満潮時は内陸ルートを選択し、安全な歩行を心がけるように。
フィニッシュの口之津歴史民俗資料館まで、約3~4時間の徒歩の旅を満喫してほしい。